『時計じかけのアクワリオ』のギネス記録認定式に密着!
あまたサウンドチーム「伯林青(ベレンス)」メンバーの坂本慎一がサウンド制作した2Dアクションゲーム『時計じかけのアクワリオ』(以下、アクワリオ)のNintendo Switch™/PlayStation®4版が、「開発開始から発売まで最も時間を要したゲームタイトル(28年と81日)」としてギネス記録に認定されました!
そのギネス記録の認定式が12月9日に行なわれたのでうかがってきました。
“ギネス記録”という言葉は子供のころから何度も聞いたことがあって、「ありとあらゆるジャンルの世界記録をまとめる団体」ということは知っていましたが、その記録の認定式をみるのは初めて! 興味津々でレポートしますのでお楽しみください!
その前に簡単に『アクワリオ』の紹介です。
このタイトルは、「ワンダーボーイ」や「モンスターワールド」など人気シリーズを開発した株式会社ウエストン ビット エンタテインメント(2014年解散 以下、ウエストン)が手掛けた2Dアクションゲームです。
このタイトルは1991年に開発がスタートし1992年に発売を予定していましたが、当時のゲームセンターは対戦格闘ゲームなどが大きな盛り上がりをみせていたため、ロケテスト(ゲームセンターでの稼働テスト)を行なった結果、『アクワリオ』のような2Dアクションゲームは「ゲームセンターのトレンドにあわない」と判断され、ほとんど完成していたにもかかわらず発売が見送りとなり、幻のゲームとなっていました。
しかし、それから二十数年後、ビデオゲームの発掘や保護などの活動を行なっているゲーム販売会社Strictly Limited Games(本社:ドイツ)の共同設立者 デニス・メンデル(以下、デニス)さんが、その活動のなかで『アクワリオ』の開発データを発見したことで事態は急転。
デニスさんは幼少の頃に「ワンダーボーイ」シリーズにハマった経験を持っているそうで、ウエストンの熱狂的な大ファンだったこともあって、「『アクワリオ』をもっと多くの人に楽しんでもらいたい!」 という想いが爆発。ウエストンはすでに解散していましたが、当時の開発者たちにコンタクトをとり、彼らやドイツのゲーム会社Strictly Limited Games/ININ Gamesと協力で開発を再開! 開発開始から28年と81日が経過した2021年11月30日にNintendo Switch™/PlayStation®4向けタイトルとして発売が実現したそうです。
日本で幻となったゲームが海外のファンの手によって甦るなんて、ドラマのような話でびっくりしますね……。
あまたサウンドチーム「伯林青」のメンバーである坂本は、当時はウエストンのメンバーで、アーケード版『アクワリオ』のサウンド制作を手掛けました。Nintendo Switch™/PlayStation®4版では、同作のサウンドトラックで「伯林青」のメンバーとともに主要曲のリミックスを担当しています。
今回の認定式の会場は、東京都新宿区の高田馬場にある「ゲームセンターミカド IN オアシスプラザ(以下、ミカド)」でした。
ミカドの店内に入ると、サウンドを制作を担当した坂本のほか、ディレクターの西澤龍一さん、プログラマーの栗原孝則さん、グラフィックデザイナーの齋藤勝夫さんや大空真紀さんなど、『アクワリオ』のオリジナル開発メンバーの方々がズラり。ギネスに認定されたこともありますが、久々のメンバー集結ということであちこちで話に花が咲いています。
また、開発メンバーが揃っているこの機会に! と、西澤さんが用意した『アクワリオ』や「ワンダーボーイ」シリーズのTシャツやグッズへのサイン大会がはじまり、貴重なメモリアルグッズが誕生してました。
こんな豪華なメンバーに話が聞けるチャンスはそうそうない! と、隙をみてみなさんにご挨拶させていただいたところ、栗原さんから今回のギネス記録の認定に関するおもしろいお話が聞けましたので紹介しましょう。
まずギネス記録に関してですが、ギネス記録というのは登録希望者が申請して審査を受けるそうで、今回の申請者はデニスさんだそうです。
デニスさんは「開発開始から発売まで最も時間を要したゲームタイトル」という内容でギネス記録に申請し、そのことを『アクワリオ』のオリジナル開発メンバーたちに伝えますが、彼には開発を開始した正確な時期がわからなかったそうです。
そこで、オリジナル開発メンバーに「ギネス記録に認定されることになって認定式をやるから、それまでに開発を開始した時期とそれを証明するための資料を探して欲しい」と依頼がきたそうです。
が……、これにものすごく苦労したそうです。
というのも、ギネス記録の認定には、外部(開発に関わってない人たち)から証人や資料など記録の根拠となる証拠物を複数提出する必要があり、関係者だけの証拠物では認定されないようになっています。
そのため、開発時期を知っているオリジナルの開発メンバーは内部の人間のため証人となれず、外部の人たちから証人を探そうにも28年前ということに加えて、ウエストンがすでに解散しているため、会社づてで探すのにもかなり難航。
ひとりはなんとかみつけることができましたが、どうしてもあとひとりがみつからないまま認定式の数日前になってしまい、記録の認定自体が怪しくなっていたそうです。
それを解決したのがプログラマーの栗原さん。
一般の方がSNSに投稿していた当時のゲーム雑誌の画像に『アクワリオ』の開発について触れられている箇所をみつけ、そのページの権利表記(©表記)で同一タイトルであることを確認。これがギネス記録の証拠物のひとつとして認められ、その号の執筆時期が開発開始時期の証拠物として採用されることになり、式の2日前になんとか認定を受ける準備が整ったのだとか。
SNSが今回のギネス記録の認定に一役買っているのもおもしろいですね! 現代だからこそ認定が受けられた記録だと感じました。
ギネス記録の認定式では、公式認定員の方から記録を正式に認めたことが発表されたあと、開発者の代表である西澤さんに認定証が手渡されました(レコーダーはデニスさんと西澤さんとのこと)。
西澤さんは受賞に関して、「まさか『アクワリオ』が発売されるとは夢にも思っていませんでしたし、ギネス記録として認定されたことにも驚いています。本当にデニスには感謝しています。これで発売が中止になってくやしい思いをしたメンバーもむくわれると思います。」とコメント。
サウンド制作を担当した坂本も今回のギネス受賞は嬉しかったようで、開発メンバーや応援に駆けつけた「伯林青」のメンバーと喜びをわかちあっていました。
今回、ギネス記録の認定式にはじめて参加しましたが、記録というのはそこに至るまでの積み重ねや過程があってこそなので、式よりもそれが認められたという喜びがあると感じました。
「開発開始から発売まで最も時間を要したゲームタイトル(28年と81日)」という記録は、現在は『アクワリオ』がレコードホルダーとなっていますが、これまで期待されながらもやむを得ない事情で発売中止になったタイトルはあるはずなので、この記録が破られる可能性はあると思います。
1ユーザーとして、そんなタイトルがまた出てくることを楽しみにしています!
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